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8/12/2010

台風の近づく夜には

今日は風が強い。
台風が来ている。

台風が近づいてくるこの雰囲気は好き。
被害が出て困っている地域があると聞いて痛む心とはうらはらに、
体のどこかからか沸き上がってくる、この高揚感。

強い風にざわざわと揺れる葉っぱの音。
ゴーっという、強い風が吹き抜ける音。
合間合間の、静寂。

カーテンを明けて寝ると気持ちがいい。
白い薄いカーテンが、風に大きく舞うのもいい。
流れる雲の速さをただじっと見ているのもいい。

まだ私が小さかった頃。
ぼろい小さな家のガラス窓は、
頼りない木枠で囲まれたペコペコした曇りガラスでできていて、
台風の風に、ガラス窓自身がガタガタと音をたてて、
それはそれは心細く不安になった。

あまりに強い風が吹く夜は、雨戸を閉めた。
雨戸は雨戸で、ずどんとした太い一枚板は、強い風にゴトゴトと音を立てた。
そのくぐもった音にはガラス窓より幾分の安心感を覚えたけど、
それでもやっぱり、不安な夜だった。

今、うちの窓は音をたてない。
ぴっちりと隙間なく閉じる、なんだかわからないマテリアルでできた窓。
すーっと静かに閉じて、ぴっちりと外界をシャットアウトする。

今日は風が強い。
まだ遠くにいる台風が、ごぉごぉと音をたて、葉っぱを木々を揺らす。
白いカーテンがひらひらと派手に舞う。

風が気持ちいい。
雨音が少し、聞こえてきた。

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